snow in the field

Yukiko Tanaka, pianist

コンサートの批評

カーネギー・ワイルリサイタルホール, 2005年12月18日

 

   バッハ=ブゾーニのオルガンコラール、「起きよと呼ぶ声」の最初の音を聴いた瞬間から、田中はこのコンサートを美しく整えてきたのだということが明白であった。彼女の歌い方は自然であり、音色はとても耳に心地よく高らかに歌っていた。そして旋律を織り成す一つ一つのメロディがはっきりとしていた。    

   ヨセフ・ハイドンのホ短調ソナタ、 Hob XVI:34では、彼女は正統派の流れを受け継ぐピアニストであると証明された。第1楽章の繰り返しはきっちりと演奏され、全て熟考されており、目を見張るような、活き活きとした演奏がすすめられた。全楽章のテンポはプレストであれ、アダージョであれ、ヴィヴァーチェ・モルトであれ、まことに明瞭で正確であった。特に満足だったのは、軽快に弾むような3楽章が、あせったりまとまらなくなったりすることなく、正確に拍を保って演奏されたことである。一言で言えば、理想の演奏ということである。

    ベートーベンのソナタへ短調、Op57では、彼女は正確な楽譜の読み取りをしており、この偉大なソナタの構成をはっきりとしたものにしていた。しかも、第三楽章の骨の折れるような繰り返しを、堂々と演奏したのであった。

   休憩の後では、世界初初演の大西の「アンティテーゼ」、サミュエル・バーバーの「バラード」Op.46,ラベルの「水の戯れ」、お決まりのリストの「2つの演奏会用練習曲」、そして大胆にもミリー・バラキレフの「イスラメイ~東洋幻想曲」が演奏された。このピアニストはこんなにも多様な形式の曲目を様々な点において成功に収めた。叙情的で感傷的なバーバー、まばゆいばかりのラベル、そして大西の曲を弾いている時が特にリラックスして見えた。そして彼女は悪名高いほどに派手で、失敗する率も高いことで有名なバラキレフを、予想だにしなかった調和と安定性を持って弾いたのであった。

    

ハリス・ゴールドスミス, New York Concert Review, Spring 2006